

画面に映っているのは、その日のトレーニングメニューや指導のポイントです。
私たちは、ただ練習メニューを順番に進めているわけではありません。
今日、子どもたちにどんな経験をしてほしいのか。
どんな状況をつくれば、自分で考え、判断し、挑戦できるのか。
そして、実際に子どもたちの中で何が起きているのか。
コーチは、そうしたことを確認しながらトレーニングを進めています。
あらかじめ準備したメニューが、必ずしもその日の子どもたちに合うとは限りません。
だからこそ、目の前で起きていることを観察し、必要に応じてルールや環境を変えていきます。
子どもたちには、夢中になってサッカーを楽しんでほしい。
そのために、私たち大人は準備を重ね、考え続けています。
実際に使用しているトレーニングメニュー
ここからは、RayoNAGOYAで実際に使用しているトレーニングメニューを公開します。
コートの大きさ、選手の人数、スタート位置、ルール、そしてコーチが観測するポイントまで記載しています。
特に見ていただきたいのは、「観測したい現象」と「コーチの介入・問い」の部分です。
私たちは、子どもたちが決められたプレーをできたかどうかだけを見ているわけではありません。
目の前の状況から何を感じ、どんな判断をして、どのように行動を変えたのか。
その過程を大切にしています。
以下は、そうした指導を実現するために準備している、100分間のトレーニング設計書です。
※選手の個人名のみ、プライバシー保護のため変更しています。
U10|10月2回目=9月4回目 人数:8〜9名 時間:100分
月テーマ:奪って前進
週テーマ:速攻か保持か?
問い:速攻か保持か?
狙い:奪った直後に前方・相手・味方の状態を見て、すぐ前進するか、一度保持するかを選ぶ。
今日の流れ:奪ったらどこへ?を再確認→行けるなら速攻→前が詰まっていたら一度逃がす→ゲームの中で速攻/保持を自分で選ぶ
W-UP|1v1「奪ったあと、行ける?」15分
人数:2人×2面
コート:縦15m×横12m
ゴール:両エンドラインに2m幅のドリブルゴールを2つずつ※1面につき計4ゴール。
攻撃側の初期配置:ハーフラインから2〜3m自陣側。
守備側の初期配置:攻撃側とハーフラインを挟んで向かい合う。距離は約3m。
スタート方法:コーチはハーフライン横。攻撃の選手にランダムに配球。
ボールが入った側が攻撃。
ルール:
– 左右どちらかの相手ゴールをドリブル通過で1点
– 守備が奪ったら即攻守交代
– 奪った選手は反対側の2ゴールを狙う
– アウトで終了
– 1回15〜20秒程度だが、選手のテンションにより調整可能
成功基準:
– 奪った瞬間に止まらない
– 最初に前を見る
– 空いているゴール方向へ運ぶ
– 正面に相手がいるなら、もう一方を見る
意図:
前回の9月③「奪ったらどこへ?」を思い出す。
まだ「保持」を教えず、奪ったあとに、まず状況を見るところから始める。
観測したい現象
– 奪った瞬間に真っすぐ進める
– 相手が正面に残ると方向を変える
– 奪った勢いのまま無理に突っ込む
コーチの介入・問い
現象: 奪ったあと前が空いているのに止まる
解釈: 奪うことが目的になっている
問い:「取ったあと、どこが空いてた?」
PSS①|2v2「行けるなら行く」20分
人数:4人×2面を基本
コート:縦24m × 横16m
ゴール:両エンドラインに2m幅のドリブルゴールを2つずつ。1面4ゴール。
両チームの初期配置:選手はハーフラインより2〜3m自陣側、横に5〜6m離れて立つ。
両チームがハーフラインを挟んで向かい合う。
攻守の距離は約4~5m。
スタート方法:コーチはハーフライン横。どちらのチームにもランダムに配球。配球された側が攻撃。
ルール
– 2v2
– 左右どちらかのゴールをドリブル通過で得点
– 奪ったら即反対方向へ攻撃
– 奪取後5秒以内の得点=2点
– 5秒以降=1点
成功基準
– 奪った瞬間に前を見る
– 前が空いていれば自分で運ぶ
– 味方がより前にいれば使う
– 相手が戻る前に前進できる
意図:
まず、「速攻できるなら速攻でいい」を体験する。
今回「保持」を扱うからといって、安全なパスを増やしたいわけではない。
前があるなら、迷わず前進していい。
観測したい現象
– 奪った瞬間に一気に運ぶ
– 味方が前へ走ってパスコースになる
– 前が空いているのに横パスを選ぶ
– 奪ったあと一度止まってしまう
コーチの介入・問い
現象: 前が大きく空いているのに横へパス
解釈: パスが安全策になっている
問い:「今、自分で行けなかった?」
現象: 奪った瞬間に前進し、そのまま得点
解釈: 相手が整う前に前進できた
問い:「なんですぐ行けた?」
PSS②|3v3「今、行く?一回逃がす?」25分
コート:縦30m × 横24m
ゴール:両エンドに2m幅のミニゴールまたはドリブルゴールを2つずつ。計4ゴール。
人数:
8名なら3v3+2名交代。
9名なら3v3+3名交代。
2〜3分ごとに交代。
攻撃側の初期配置:
両チーム共通で、- 後方1人(ハーフライン4~5m自陣)- 前方2人(相手コートに入って1-2m前)の三角形。
初期配置では前の2人は相手コートに入っているので後方から相手2人が追いかけてくるイメージ。なお、どちらが攻撃になるかは決まっていない。
スタート方法:
コーチはハーフライン横。
どちらのチームにもランダム配球。
ボールが入った側が攻撃。
ルール
– 通常3v3
– 奪ったら即攻守交代
– 奪取後6秒以内に得点=2点
– 通常得点=1点
成功基準:
奪った瞬間に、前が空いている→そのまま速攻
前に相手が残っている→横・斜め・後ろへ一度逃がす
そして保持した後に、もう一度前を探すところまで出る。
意図:今回の中心。速攻か保持かを、コーチの指示ではなく相手の状態で選ぶ。
特に、初期配置で各チームの後方に1人残すことで、奪った瞬間に真正面へ相手が残る場面を増やす。
前回の「奪ったらどこへ?」から、「そもそも今すぐ前へ行ける?」へ一段進む。
観測したい現象:
– 奪った瞬間、前が空いていて速攻
– 前方に相手が残り、横へ逃がす
– 相手が集まった逆側を使う
– 一度保持したあと再び前進
– 前が詰まっているのに強引に突っ込む
– 一度逃がしたことで、そのまま後ろ向きの保持になる
コーチの介入・問い
現象: 奪った直後、正面に相手がいるのにドリブルで突っ込む
解釈: 「奪ったら前」が「真っすぐ行く」に固定されている
問い:「今、すぐ行くのと一回逃がすの、どっちがゴールに近づけそう?」
現象: 横へ逃がしたあと、そのまま安全なパスが続く
解釈: 保持が目的になっている
問い:「一回逃げたあと、次はどこを見る?」
現象: 相手が戻る前に速攻して得点
解釈: 相手の準備前を使えている
問い:「相手は戻れてた?」
GAME①|3v3+GK「相手の戻りを見る」20分
コート:縦35m× 横27〜28m
ゴール:フットサルゴール2台
人数:
8名:3v3+GK2人
9名:3v3+GK2人+1人交代
GKは2〜3分ごとに交代してOK。
攻撃側の初期配置
GK+FP3人。
FPは、- 後ろ1人- 左右または前方2人
程度に広がってスタート。
守備側の初期配置※攻撃の配置だけ伝え、守備が自然に配置をとれていたら伝える必要なし
相手の再開時は、- 前1人- 後ろ2人程度。
ただしプレー開始後は完全自由。
スタート方法:
GKからスタート。ゴール後も失点側GKから。
アウトはドリブルイン。
ルール:基本は通常ゲーム。
ただし、
奪取後8秒以内のゴール=2点
通常ゴール=1点。
成功基準
– 奪った瞬間に相手の戻りを見る
– 相手が戻れていない→速攻
– 相手がすでに戻っている→一度保持
– 保持したあと再び前を狙う
– ボールを持っていない選手が前進の選択肢を作る
意図:
PSS②で出した判断を、ゴール・GKのあるゲームに近い状況へ移す。
判断基準を、「自分が行きたいか」ではなく、「相手が整っているか」へ近づける。
観測したい現象
– 奪った瞬間に3人とも前へ出る
– 逆に全員がボールへ近づく
– 相手が戻れていないのに安全な保持をする
– 相手が戻っているのに縦へ強引に入れる
– 保持から再び前進するタイミングを見つける
コーチの介入・問い
現象: 相手がまだ戻っていないのに横・後ろへ戻す
問い:「今、相手は戻ってた?」
現象: 相手3人がすでにゴール前にいるのに突っ込む
問い:「今、急ぐ方が有利だった?」
GAME②|通常ゲーム17分
コート:横28〜30m × 縦36〜38m
ゴール:フットサルゴール2台
人数:GAME①と同じ。
スタート方法:GKから。
アウトはドリブルイン。
ルール:
ボーナス点をすべて外す。
通常得点=1点。
タッチ制限なし。
成功基準:ルールがなくても、
– 奪ったら前を見る
– 行けるなら速攻
– 行けないなら一度保持
– 保持したあと再び前進
– 相手の状態によって判断を変える
が自然に残ること。
意図:
今日の学習が、ルールに誘導された行動ではなく、ゲームの中で使える判断になっているかを見る。最初の7〜8分はノーコーチング。
観測したい現象:
特に見たいのは、同じ選手が、場面によって異なる選択をすること。
コーチの介入・問い
基本は介入しない。
必要なら一度だけ、「今、何を見て前に行くか逃がすか決めてる?」
振り返り時間:3分
問いは3つ。
「どんなときは、すぐ行けた?」
「どんなときは、一回落ち着いた方がよかった?」
「前に行くか逃がすか、何を見て決めた?」
今日の全体成功基準
「奪ったら速攻」でも、「奪ったら保持」でもない。
同じ選手が、
相手が整っていない → 速攻
相手が整っている → 保持
と、状況によって行動を変える場面が出ること。
9月①〜④の流れで言えば、
どこで奪える?→どう前を消す?→奪ったらどこへ?→今すぐ行く?一回落ち着く?
までつながれば、9月「奪って前進」は完結。
子どもたちが、自分で選び続けられるように。
一見すると、ただサッカーを楽しんでいる時間にも、一つひとつの意図があります。
しかし、私たちが準備した通りに子どもたちがプレーすることが、目的ではありません。
自分で発見し、試し、失敗し、もう一度挑戦する。
ときには、私たちが予想もしなかったプレーや発想が生まれることもあります。
だからこそ、コーチも子どもたちを観察し、考え、学び続けます。
私たちが大切にしているのは、正解を教えることよりも、子どもたちが自分で答えを見つけていく経験です。
私たちのクラブは、選手が自分で選び続けられる環境を、トレーニングの中からつくっていきます。
RayoNAGOYA
心を育てる/心で育てる
